《2010.4.30》
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※4月29日以前の日記は、前ページに掲載
4月30日(木)昨日に引き続いてさわやかな晴れ。東天に15.6夜の月が鮮やかでした。
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明日からの5連休中に予定している仕事に必要な情報を得るため、昼前に登庁。時間があったので市役所近くの書店にも立ち寄りました。刺激的な書名の本が平積みされているのを見つけ手にとってみると、著者は木原敬介さんでした。「2009・9.・27の堺市長選挙で何があったのか? 知事VS現職市長 その裏に隠された真実とは?」と、センセーショナルな帯も巻かれています。奥付の発行日は「2010年5月20日」になっていますから、一足早い発売だったようです。「敗軍の将が兵を語る?」か…と思いながら購入。「私の三選をめざす堺市長選挙に知事参戦」(第1章)、「我が人生は流れゆく水の如く」(第2章)、「甦れ自由都市・堺」(第3章)のうち、第1章を読んでみました。
●覆い隠さず、にじみ出ている“恨み節”
論調の基本は、「不当介入した橋下知事に負けたのであって、竹山候補に敗れたわけではない」というもの。木原氏の激励パーティーで「自治体トップの理想モデル。神様だ」と褒めそやした知事が、豹変して、自身の野望実現のために竹山氏を利用した…という市長選の構図を説明しようとしています。記者会見や事前街頭演説、選挙期間中の主張を丹念に紹介している下りは、今後、それらの言葉を点検する資料として役立ちそうです。ただ、現職市長として、また候補者として忙しかった著者がこれらの資料を集められたはずはなく、執筆にあたっての協力者(もしかしたら陰のライター)がいるのではないかという疑念も湧いてきます。
●自覚してほしい本当の敗因(「木原市政」への市民批判)
落選は「私の不徳の致すところ」と言う著者は、準備不足や相手の後手に回ったことを否定しません。知事とのツーショットポスター、市長退職金などに関する対応は確かに遅く、私の議会質問に「今期の退職金は受け取る」と言明するなど、市民感情を推し測る力も欠けていました。その背景には、自民、公明、民主、社民各党の支持を受ける自分が「負けるはずはない」との自負があったのでしょう。しかし、選挙戦の最終盤には、竹山候補の攻勢をしのぐため「LRT凍結」を掲げざるを得なくなりました。政党や組織の力を頼りにした木原式市政運営に対して市民の不信が増大し、橋下知事がそれにうまく火をつけたことを反省する言葉がこの著書にはありません。
●竹山新市長の口から出まかせ、デマ発言を攻撃
選挙中の竹山発言の危うさは議会でもしばしば問題になっています。新型インフルエンザ対策をめぐる現職批判が事実に基づいていなかったことへの謝罪があり、「中学3年までの通院、入院医療費の無料化」の公約は早速反古にされました。竹山新市長のいい加減さを追及した馬場伸幸議員(当時・自民党市民クラブ)の発言も、著者はこの本に紹介しています(98p)。
●橋下氏の野望を批判、「大阪維新の会」への警戒感も…
他方、木原氏は、橋下知事を「天性の詐欺師」(59p)だと批判します。また第3章では、「橋下独裁の大阪『都』自治論」は、橋下氏の下へ国から権力・財源を分捕るもので、竹山市長はその「使い走り」だと主張(194p)。知事の野望を実現するための「大阪維新の会」への警戒感も顕わにしている(196p)のです。ところが、前記の馬場議員は、他の4市議を巻き込んでこの橋下新党に参加しました。木原市長を推して戦った自民党の旗頭が、市長選の敵将の旗下に連なるという事態が起こることまで、著者の“政治感覚”では想定できなかったのでしょうか。
※「我、知事に敗れたり…2009年9月堺市長選」(論創社刊)定価1500円+税