今年2月17日、堺市教委の指導主事研修で講演するために来堺されたリヒテルズ直子さんから、メールが届きました。最初に出会った2003年当時、ご自身のホームページの「オランダ通信」で、欧州の社会事情や政治事情を発信されていました。今回いただいたメールはその頃を彷彿させるような、「新型コロナウイルス対策・欧州事情」です。ご本人の了解をいただき、以下に掲載しました。(小見出し=長谷川)

《2020.4.23》
(2309)

※4月22日以前の日記は、前ページに掲載

23日(木)9.0℃~15.0℃。西高東低の天気図で、季節は一月逆戻りしたようです。

長谷川俊英様
お変わりなくお過ごしですか。コロナ感染拡大で、全国的に外出自粛規制が出されているとのことで、もっと早くにご連絡を差し上げたかったのですが、ずるずると遅くなってしまいました。大阪も大都市ですから、一旦感染者が出ると広がりやすいのではないかと心配しています。私が伺った頃は、ダイヤモンドプリンセス号の船上で感染が広がっているということで、国内の感染者はまだあまりいないようでしたが、その後、イタリアに飛び火し、その後のヨーロッパでの感染拡大は大変急速でした。やはり、陸続きなのと、欧州連合で国境通過に制限がないためだと思います。
●オランダ学校閉鎖始まり、フランスでは厳しい外出制限
3月7日から2週間、日本人向けの研修を予定していましたが、ギリギリになって半分以上がキャンセル、それでもくるという人たちのために中止するわけにもいかず、赤字覚悟で研修を始めましたが、途中で、学校閉鎖が始まり、日本への渡航便も欠航が出始め、研修生には早めに切り上げて、便のあるうちに日本に帰国してもらいました。私も、夫がいるフランスで国境閉鎖の話が出始めたため、早急にオランダからフランスに移動。翌日から、大統領命令で、外出が著しく制限されいまに至っています。買い物、病院などに行く場合、人を援助しに行く場合、半径1キロ以内1時間以内の散歩以外は外に出られませんし、外出の際には、外出時刻と目的を書いた書類と身分証明証を持っていなければなりません。ただ、私たちがいるのは過疎地で人も少ないですし、周りは山や野原ばかりの場所ですので、それほど苦痛ではありませんし、危険も感じずに過ごせます。
●感染拡大の峠を越し、規制解除の方法を模索/学校も15人以下で半日ずつの授業
イタリアもスペインもどうやら峠を越したようで、オランダ、ベルギー、ドイツ、フランスも、じわじわと規制解除の方法を考え始めています。5月はじめから学校が再開する予定ですが、保護者や教員たちが感染の心配をしており、クラスを半分ずつ、15人以下にして半日ずつの授業にするなどの方法を考えているところです。
●人々の生活脅かす前途多難の経済
ただ、経済の見通しは前途多難で、IMFのいうように、マイナス6%成長となれば、打撃は相当に大きいと覚悟しなければならないようです。特に、2008年の不況以後、まだ正規の職につけていない若い人たちがいる南部ヨーロッパの国々は、今回の打撃で大変難しい状況に陥るのではないかと言われています。
フランス、イタリア、スペインなどは観光収入に負うところも多く、今年の夏は、観光客が激減するかもしれないので、心配されます。私たちがいるフランスの田舎も、夏の観光客を目当てにしたレストランやカフェ、土産物店が結構ありますが、ギリギリで生活している人たちにとって一夏の収入がなくなるのは相当な負担だと思います。
●市民の自由意志尊重のオランダ/官僚権威の高いフランス
ただ、今回の感染騒動で、ポピュリズムの広がりは少し減ってきたかもしれません。信頼できる情報を求めて科学者たちの発言が毎日のようにマスメディアに出て視聴者が関心を寄せていますし、政治家は、科学者の信頼できるデータなしには施策を決められないという雰囲気も強まっています。
また、市民意識が強く市民の自由意志を尊重したオランダと、官僚の権威が大きいフランスとの違いも感じています。結果的にどちらが功を奏するのかはわかりませんが、指導者の指揮によってではなく、指導者は情報を提示し、最低限の規則を示した上で、市民に自由意思で判断して感染が広がらないように責任ある行動を取るように呼びかけるオランダのやり方は大変興味深いです。デンマークやスウェーデンも市民主体の施策に傾く傾向があるように感じます。
●コロナ感染拡大終結後の世界とどうかかわるかも考えたい
何れにしても、市民の連帯が求められる中で、市民自身が、地球規模の問題をどう解決すべきなのか、あるいは、コロナ感染拡大終結後の世界とどうかかわるべきなのかをじっくり考える時間になっていることを祈るばかりです。喉元過ぎれば熱さ忘れる方式では、これからを生きて行く若い人たちに本当に申し訳なく思います。
ちょっとご様子お伺うつもりが長くなってしまい申し訳ありません。不自由かと思いますが、どうぞくれぐれもお気をつけになりご無事でお過ごしになりますように。
リヒテルズ直子

「アクション日記」月別インデックスへ